仙台赤門短期大学 看護学科

宮城県仙台市の看護師養成学校|仙台赤門短期大学 看護学科

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教職員コラムリレー

第11回「温泉」と「けやぐ」

大沼 由香

今年の夏は異常なほど暑く、夏休みとはいえ外出する気にならず、クーラーの効いた部屋でテレビを見て過ごしました。

ある晩、青森のねぶた祭りが映し出され、ラッセラー、ラッセラーの掛け声と跳人(はねと)の姿を見て、津軽での暮らしを思い出しました。

私は一昨年まで8年間、津軽で暮らしていました。思い出したのは、「温泉」と「けやぐ」のことです。

 

津軽地域の温泉は、その数が全国ベスト10に入るほどたくさんあります。地域の人たちは自宅に風呂があっても、仕事帰りに温泉にいきます。

風呂道具を車に積んでいる人も多く、私も真似て積んでいました。

温泉の脱衣場での会話は、野菜の育ち具合から家族の病気の話までと幅広く、

見慣れぬ私に声をかけてくれる人もいて、津軽弁を教えてもらいました。

浴室では若いママが、近所の人の背中を流しながら子育ての悩みや愚痴こぼしをしていたり、

中学生の娘さんと母親が並んで湯船に浸かり、学校の出来事を話している等、自然なスキンシップとコミュニケーションが、

どの温泉にいっても見られました。温泉を通した地域文化が継承されています。

 

津軽弁の「けやぐ」は、友達と訳されますが、実際は、すべてを受け入れあう親友を指します。

客人をもてなす津軽衆ですが、よそ者はなかなか「けやぐ」になれません。

それでも、私の津軽弁のヒヤリングが合格点に達する頃、「けやぐ」ができました。

この年齢になってから「けやぐ」に出会えるなんて奇跡だと思います。

「けやぐ」となった親友たちとは、仙台で暮らす今も、深い信頼と友情を感じています。

 

「走れメロス」は、死をすら超越した友情を描いた作品ですが、作者の太宰治は津軽の生まれです。

「けやぐ」を知っている太宰だから、この作品が誕生したのかもしれません。暑い夜は温泉に入って、「さっぱど」したいところです。

 

画像提供:(公社)青森観光コンベンション協会