仙台赤門短期大学 看護学科

宮城県仙台市の看護師養成学校|仙台赤門短期大学 看護学科

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教職員コラムリレー
Akamon Column Relay

第85回お盆に想う

浅野 志保

もうすぐお盆です。

お盆の時期には先祖が浄土から地上に戻ってくると考えられています。

ご先祖様を1年に1回、家にお迎えし、ともにひと時を過ごして、ご冥福をお祈りし、先祖の霊を供養します。

コロナ禍で大勢が集まるのが難しくなった昨今、みなさんはどのようにお盆をお過ごしでしょうか?

 

迎え火、送り火の際には、なすときゅうりの精霊馬を飾る地域が多くあります。

これらにはお盆にご先祖様が行き来するための乗り物としての意味があります。

きゅうりは足の速い馬と見立てられ、ご先祖様が家に早く帰って来るように迎え火の時におきます。

送り火の際はご先祖様に少しでも長くともに過ごしていただくため、

牛に見立てたなすの乗り物で、元のところに帰っていただきます。

 

スーパーには、お盆のお飾りセットが売っています。

この中には、精霊馬も含まれています。

我が家では祖父が亡くなって以降、庭で採れた野菜を使って精霊馬を作り、飾るようになりました。

 

手順は、精霊馬に適したサイズのなすときゅうりを採ってきて、つまようじや短く切った割り箸を刺すだけです。

しかしながら、家庭菜園での収穫物は不揃いなので、前傾姿勢になったり、後ろ足が長かったりと、

バランスの取れた(見栄えの良い)体位を取るのに試行錯誤します。

最近は、精霊馬アートなるものが流行っているようで、クオリティの高い作品も見受けられます。

それらを横目にスタンダードが一番…と言い聞かせながら作業を続けます。

 

精霊馬を作成中、祖母は孫の姿を見て笑っています。

自然と、祖父との思い出や長年歩んできた生活史を語り始めます。

ふと傍らに祖父がいるような感覚になります。

 

祖父の病気の悪化に伴い家族も揺れ動いたこと、亡くなった時の記憶は未だに鮮明に残っていること、

祖父のためにやってあげられた満足感が今の原動力になっていること…

祖母と語り合う中で、懐かしさを伴った悲しみだけではなく、どこかほっこりとした気持ちにもなります。

 

故人を大切に想う人の記憶の中で、故人の存在は生き続けるのだな、とつくづく感じます。

そして、その存在は姿がないまま、残された者を癒し、そっと背中を押してくれているのだなと思います。

 

さて、今年の精霊馬はどのような出来栄えになるでしょうか…。