第25回私の好きな絵本
初めてコラムを書くことになり、何について書こうかなぁ・・・と考えたとき、
頭に浮かんだのは、我が家の本棚に並ぶ絵本たちでした。
大人になってから少しずつ買い集めたものがいつの間にか増え、本棚をひとつ占領しています。
最近は絵本を手にとる機会が少なくなりましたが、夜ねる前に読むことがあります。
クスッと笑える話、勇気をもらえる話、自分を戒める話、ほっこり優しい気持ちになれる話。
どれも私にとって大切な絵本たちです。
その中から、私のお気に入りの1冊をご紹介します。
『よるとひる』
作:マーガレット・ワイズ・ブラウン
絵:レナード・ワイスガード
訳:ほしかわ なつよ
今から78年前の1942年に作られた絵本ですが、日本で発行されたのは2009年です。
白・黄色・黒だけで描かれた絵本で、昼をこよなく愛する白ねこと、夜をこよなく愛する黒ねこが登場し、
おたがいが昼と夜のすばらしさについて相手のねこに話します。
私はこの絵本のストーリーも好きですが、特に好きなのが「ことばの響き」です。
絵本の冒頭部分をご紹介します。
「しろいねこは、日だまりに まるくなっているのが、すきでした。
ひるのぬくもりと、 ひるのざわめきが、すきでした。
カラスのなくこえ、ハエの羽音、うまのいななき、おとこたちの はなしごえ、 しゃりんのまわる音が、
すきでした。」
中略
「くろいねこは、よるのしじまを あるくのが、 すきでした。
ホタルの ひそやかな またたきが、 すきでした。
やわらかなやみのなかに うかびあがる、いろいろな もののかたちが、すきでした。
やわらかなやみのなかに ひとつ、また ひとつと、きこえてくる音が、すきでした。」
『よるとひる』より
白ねこの昼の場面では、あたたかな日ざしの中で、いきいきと暮らす人々や動物たちの様子が伝わってきます。
黒ねこの夜の場面では、ひんやりとした空気と月明かりで照らされた建物、
それから不思議と少し湿った土のにおいまでしてくるようです。
私はページをめくるたびに、本当に自分が絵本の世界に入り込んだような気持ちになります。
絵本はこどもたちだけのものではありません。
興味をもっていただいた方は、どうぞ一度お読みください。
このコラムを書いていたら、「ひさしぶりに寝る前に『よるとひる』を読もうかな」という気持ちになってきました。
ページをめくる感触や音まで楽しみながら・・・。