第20回「新しい家族」
鈴木 博美
我が家へ一匹のメスの黒猫がやってきた。
彼女が一人でやってきたわけではなく、
ある人から、「保護猫を飼わない?」との話があったからだ。
私以外の家族は大賛成だったが、私は反対だった。
なぜなら小学生の時、同級生の男子にハムスターを背中から入れられた経験があり、その時から大のネズミ嫌いとなった。
とにかくネズミという活字を見るだけで寒気がする程嫌いになった。
猫=ネズミを捕まえるという思考回路がインプットされてしまっていた。
そして、黒猫は、昔から不吉な動物とされる場合があり、黒猫が前を通ると不幸がおこるなどの迷信というものを信じていたからだ。
しかし、私に同情してくれる家族はおらず、民主主義の原則、多数決の原理により彼女を飼うことが決定したのである。
9月のある日、生後2か月の彼女がやってきた。
彼女は怯え、「シャーッ!」と威嚇攻撃を繰り返し、家具の裏に潜り込んでしまった。
そこから出そうとすると今度は、尻尾を太くし爪を立てての攻撃に家族全員が傷だらけ。
そんな状況が2、3日続いた。
あれから3年。彼女は家族の一員となった。彼女が来てから家族の会話も増え、家族の潤滑油となった。
いつも家族の帰りを玄関で待ち、無事に帰ってきたことを確認するようにスリより甘える彼女は、私達家族のかけがえのない存在となった。