仙台赤門短期大学 看護学科

宮城県仙台市の看護師養成学校|仙台赤門短期大学 看護学科

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教職員コラムリレー
Akamon Column Relay

第137回「人は素晴らしきかな=影響力 -失敗からの学び-」

安倍 藤子

 看護師3~5年目頃の失敗談を3つ、ここに公表する。
 一つ目は、幼児A君に「検査室で、耳から血を取る検査をしてきてください。」と伝えた時である。A君は医療処置にすんなりと応じる子どもではなく、訝しげに「それって…ここ(腕)から血取らないよね…」と聞いた。A君の説得に時間を取られている場合でない私は、腕からの採血のことは言わず「耳からだけだと思うよ…」と伝えた。検査室から戻ったA君は「ここ(腕)からも取ったよ、うそつき!」と浴びせた。見破られた…根拠のないその場しのぎは通用しない、患者にはこれから訪れる現実を一緒に乗り越える覚悟で接するべきと学んだ。
 二つ目は、末期がんで腹水貯留のあるBさんの前に、うっかりしたことに化粧もせずに立ち、「何だい、顔色悪いな~。オラ、具合悪い…なんて言えねぇな~」と言わせてしまったことだ。健康そのものの私だが、地肌は色白を通り越して青白い。見過ごさなかった…患者の前には身も心も頭脳もベストの状態で立つべきで、そこではじめて対等の立ち位置を保つ関係になると学んだ。
 三つ目は、夜勤で、ポータブル便器の在庫がなく「ポータブル便器を確保している方は返却」と一斉放送でお願いした時だ。老年期のCさんが「見つかったの?電池?」と私が持っていた懐中電灯を見て言った。その発言を理解できずにいたが、何人かの患者からCさん同様の質問があり、私の一斉放送はポータブルベンキではなくポータブルデンチ、すなわち懐中電灯を看護師は探していてそれがなければ大変だろうと患者さんたちが心配してくれていたのだった。Cさんは腫瘍が皮膚まで隆起していても、痛いとは言わない方だった。仕事を終えた夜中の2時、Cさんの部屋にも灯りがついていた。疲れもあり、次の勤務でCさんにお礼を言おうと思ったが、次の勤務でCさんの姿はなく、私はCさんにお礼を言う機会を一生逃した。見誤った…後で…は後悔するだけ、迷った時は今やるべきと学んだ。
 人の影響力は素晴らしい。私の今日のインフルエンサーは誰だろう。