仙台赤門短期大学 看護学科

宮城県仙台市の看護師養成学校|仙台赤門短期大学 看護学科

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Akamon Column Relay

第108回ナイチンゲールってすごい!

藤原 美加

 ナイチンゲールのことは、誰でも知っているだろう。ナイチンゲールは近代看護の礎を築いた人で、私もかつて看護学校入学後、最初にナイチンゲールの「看護覚え書」を学んだ。その後は怒涛のように専門知識を詰め込むだけ詰め込んで、看護師免許を取得し大学病院に就職した。

 就職して新人看護師になった頃は、できないこと、わからないことだらけで、2年目看護師になるまでの期間は私史上3本の指に入る暗黒時代だった。毎日毎日、勉強のため(?)重症部屋か手術直後の患者さんの受け持ちで、やり残しはなかったか、ひやひやしていた。一方先輩たちはてきぱきとかっこよく働き、時として医師と対等にディスカッションしていた。2~3年目の先輩も、その輪の中で医師に質問したりして、「いい視点だね~」などと褒められている。私には、1~2年の経験の差がとても大きく感じた。

 個室の食道がんの手術後の患者さんを受け持っていた、ある日のことである。その患者さんは、モニターや点滴、チューブ類が接続され、ベッド上安静の指示のため、日常生活の多く(トイレ、洗面など)にお手伝いが必要だった。『今日も術後の患者さんだ・・・』緊張しつつ、自分を奮い立たせて「おはようございまーす。ご気分はいかがですか?少しカーテンと窓を開けますか?床頭台の位置が変わりましたが、この方が良かったですか?昨日気づかなくてごめんなさい。」と、挨拶をした。そこで、患者さんがかすれた声を絞り出して話してくれた。「昨日の夕方、消毒の時に動かしてそのままだからいつもの場所に戻してほしい。」と。私は謝罪しながら、いつもの位置に床頭台を戻した。「ありがとう。気づいてくれて。昨日はニュースも見られなかったんだ。」数日間その言葉が胸に引っかかって、しばらくぐるぐると考えていた。看護学校の先生が「ナイチンゲールはね・・・看護とはね・・・」って言ってたな、と。そこで、ナイチンゲールの「看護覚え書」を読み返した。

 ―看護師のまさに基本は、患者が何を感じているかを、患者につらい思いをさせて言わせることなく、患者の表情に現れるあらゆる変化から読みとることができることなのである―

 治療や処置にばかり気を取られていた自分を反省し、看護師として早く成長したいと思えるようになった出来事だ。あの個室の患者さんが「看護師の基本」を教えてくれた。今でも本当に感謝している。そして、1800年代に“Notes on Nursing”で看護を明文化し、現代でも読み継がれていることに、ナイチンゲールってすごい!と改めて思う。

現代社 看護覚え書(改訳第7版)
これは最近知人から譲り受けたもの。
私が最初に手に取ったものは初版か第2版。