仙台赤門短期大学 看護学科

宮城県仙台市の看護師養成学校|仙台赤門短期大学 看護学科

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教職員コラムリレー
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第18回道の端で見つけた神さま ~現代を見守る中国道教の教え~

石母田 由美子

健康のために、田舎道をウォーキングしています。

最初は、歩数や距離を伸ばすことで精いっぱいでしたが、少しずつ周囲の風景が目に入ってくるようになりました。

ふと、道ばたの小さな石仏らしきカタマリが気になり、しゃがみこんでよく見てみました。

道祖神さんと並んで、「庚申」の文字が彫られた石です。


「庚申」の意味が分からず、調べてみました。

 

「庚申信仰(こうしんしんこう)」

庚申信仰は、中国より伝えられた道教に由来する教えです。

“中国道教の説く「三尸説(さんしせつ)」をもとに、仏教、特に密教・神道・修験道・呪術的な医学や、

日本の民間のさまざまな信仰や習俗などが複雑に絡み合った複合信仰である” (ウィキペディアより引用しました)

 

その内容は、小さいころに祖母から聞かされていた「お話」でした。

祖母曰く、 

人間のカラダには、「三尸(さんし)」という三匹の虫がいる。

彼らは、病気を引き起こす元になっている。


上尸(じょうし)→人間の頭の中に住み、首から上の病気を引き起こす

中尸(ちゅうし)→人間のお腹の中に住み、内臓の病気を引き起こす

下尸(げし)→人間の足の中に住み、腰から下の病気を引き起こす

3匹の虫は、人間が死ぬことでカラダの外に出て自由になれるので、

常々人間の寿命を縮めようと窺っている。

普段は、体内から出ることができない。

しかし、「庚申の日」だけ人間が眠っている間に体内から飛び出し

天帝(閻魔大王)にその人間の悪行を伝え、寿命を短くしてもらう。

人間は、寿命を短くされては困るので、虫がカラダの外に飛び出していかないように、

「庚申の日」は夜がきても眠らずに、眠気をとりはらうために集会を開き、太鼓をたたいたり、

ごちそうを食べたりして夜が明けるのを待った。

 

小さい頃、三尸の図を見せられながら、祖母に聞いた話で、図的には、

中尸がぱくぱくと内臓を食べるイメージがあり、怖かったです。

 

庚申塔(こうしんとう)だった!

庚申の日は、「かのえさる の日」とも読みます。

通常使用している「干支」の

「十干」と「十二支」を順に並べていくと、60回目で一回りして、

「庚申(かのえさる)」は57番目の組み合わせになります。

つまり、「庚申の日」は、60日に1回の割合で巡ってきます。

また、年で計算すると1年は365日で「庚申の日」は基本6回ですが、

年によっては、5回の年もあれば7回の年もあります。

それを五庚申と読んだり、七庚申と言ったりします。

庚申の日(年)は、金気が天地に充満して、人の心が冷酷になりやすい

(※ 中国の思想である陰陽五行説では、木火土金水の五行に十干の陰陽一対を配しており、庚は金性の陽に割り当てられる。

金は金属の冷徹・堅固の性質を表すことから金気により人々の心が冷えて固まってしまう、の解釈。)

とされていますが、七庚申年は豊作、五庚申年は凶作という伝承が岩手県に残されています。

 

また、庚申の日に、夜を寝ずに過ごし夜が明けるのを待つことを庚申待(こうしんまち)と言います。

庚申待を行うための集まりを「庚申講(こうしんこう)」と言いました。

平安時代に中国から伝来した「庚申信仰」ですが、江戸時代には「庚申待」を18回繰り返すと、

それを記念して石碑の建立がさかんに行われました。

今、道ばたに残っているのはこの石碑「庚申塔」と呼ばれるものです。

庚申塔は、道と道の継ぎ目に建立されることも多く、「塞神(さえのかみ)」としての役割も果たしていたと言われます。

 

※「塞神」→村や部落の境にあって、他から侵入するものを防ぐ神。

邪悪なものを防ぐ“とりで”の役割を果たす。

庚申信仰は、地域の人々の暮らしに深く根付いていたのですね。

 

2020年の庚申の日は、

1月18日(土)、3月18日(水)、5月17日(日)、7月16日(木)、9月14日(月)、11月13日(金) です。

さて、この日の夜は何をして過ごしましょうか。

虫たちが、日頃のワタシの悪行三昧を閻魔様に告げ口しないように、一晩中起きていなければ!!

 

庚申の日のウォーキングでは、庚申塔に手を合わせ、

平穏なくらしの守護に感謝して、今後の健康を祈りたいと思います。

庚申塔が残る街で、田んぼの風に吹かれながらくらしを営む幸せを

感じています。