仙台赤門短期大学 看護学科

宮城県仙台市の看護師養成学校|仙台赤門短期大学 看護学科

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第143回「看護はファシリテーションだ!」

鈴木 慈子

「ファシリテーション」という言葉を知っていますか?
 私は病院で病棟看護師だった時代、実習指導者を命じられ、実習にやってくる学生さんとどう付き合ったらよいか、ぼんやりと悩んでいた時に出会いました。
 私にとってファシリテーターの師匠である中野民夫さんは、著書の中でこう書いています。

 人が集って何かをしようとするとき、どうしたらお互いに活かし合い、創造的な成果に結びつけることができるだろう。そんな問いに答えるのが「ファシリテーション」です。(ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ.岩波書店.2009)

 また、ファシリテーションはよく助産師に例えられます。お産の場では、生むのは母親、生まれるのは子ども、お産を助けるのが助産師です。学びの場では、学ぶのは学生や研修生、生まれるのは学びや気づき、学びのプロセスを助けるのがファシリテーターというわけです。

 初めて参加したファシリテーション講座でこの説明を聞いた時、ビビッ!ときました。「私たちのやっている看護はまさにファシリテーションだ!」治療を受けて回復や健康を目指す主役は患者さん、患者さんの回復を支えるのが看護であるならば、看護はまさにファシリテーションであると。そして教育についても、主役である患者さんを学生に置き換えると、関わり方の方向性は看護と同じであることに気づきました。それまで自分は「教育とは何か」を学ぶ機会がなく、「自分が何か教えてあげないといけないのでは」とどこか偏見を持っていたのですが、肩の力が少し抜け、教育に携わるということのハードルが下がったのを記憶しています。

 このファシリテーション講座には、普段かかわることのない企業にお勤めの方や公務員の方、フリーランスの研修講師さん、WEBデザイナーさんなど多種多様な参加者の方がいました。共通言語を持たない相手と関わり、学んだファシリテーション「スキル」をお互いに実践しながら自分の問いと向き合い、瞬間瞬間の最適解を導きだすという学び手としての体験は、看護実践と似ていることに気づきました。そして体験した学びの場を俯瞰してみた時に、学びの促進役であるファシリテーターの「こころ」や「あり方」が場に影響を与えていることにも気づきました。この講座で学んだ「ファシリテーションのスキルとこころ」は自分にとって教育の原点であり、教育現場に身を置く今現在も修業は続いています。

 体調が崩れたり、忙しくて心を失ってしまうとどうしても自分本位になり、看護や教育の相手が主体であるという「あり方」も乱れてしまいます(自戒をこめて)。新年を迎えましたが、どうか皆さんも「からだ」と「こころ」を大切に整えて、これまで学んだ「スキル」を発揮していきましょう。