第132回「読書感想文の思い出」
森岡 薫
私は小学2年で己の文才の無さを自覚した。2年生の時、教科書に載っているお話の一つを要約(表現は違っていたと思う)してくるという宿題が出た。要約の意味がわからない私は、長々とほぼ全文を写したような要約を提出した。しかし同じクラスのMちゃんは、原稿用紙1枚程度のみごとな要約を皆の前で発表した。Mちゃんはすごいなと思った。
夏休みの宿題には毎年読書感想文が出された。低学年の頃はほぼお話の内容を写したものに、「主人公は偉いなと思いました」的な感想を少し足して終わりにしていた。しかし上手な人の読書感想文を読み、読書感想文とはどうも自分が本を読んで感じたことを書くらしい。しかも本文の内容を全く書かず、自分が思ったことだけを書いても良いらしいと気づいた。その後は読書感想文用の本を読む時は、「こういうことを感じたらよいかもしれない」と意図的に感じたことにしながら読んでいたように思う。
時が経て私は大人になり、自分の子供たちには文章の上手な人になってほしいと願った。毎年夏休みの読書感想文には、「今年はどの本を読もうか」「できたらお母さんに見せてね」「ここをもう少しこうするといいよ」と、事細かに助言した。おかげで我が家の子供たちは、読書感想文の大嫌いな人に成長した。