第51回今考えると怖くない?
20代のころ…、といっても何十年も前の話しになりますが。
「なんか、遠くに行きたい!」と思ったのがきっかけでした。
どうせなら海外!でも初めての海外だから安全なところ…。と、いろいろ調べて向かった先はロンドンでした。
しかも格安のオープンチケットでホテルの予約は7日間。
貧乏旅行だったので深夜バスで成田まで行くだけでかなりの旅行感覚になってしまい疲労困憊。
このまま仙台に帰ろうかと思った記憶があります。
飛行機で12時間以上というその街は異国でした。
そして、安全なところという概念はその街に着く前に砕かれました。
「サッカーのワールドカップでイングランドが破れて街は少々危険な状況です。
外出はお控えになった方がよろしいかと思われます」と機内アナウンスがあったのは
飛行機が降下し始めてからでした。
「おい機長さん、今さら何を言い出すんだ!」と思ったのもつかの間、Heathrow空港へ無事に到着。
外人ばかりの中、電車の乗り方もわからず、言葉もわからず、ホテルの名前を書いた紙を
cab(タクシー)の運転手に見せ直行してもらいました。
テレビで見たことのあるような景色の中をどんどん進み、ホテルに近づくと、
ホテルの近くで車がひっくり返って燃えていました…。
安全なところを選んだはずなのに…。
そこからはありがたい「機長のお言葉」だけが頭の中をよぎりました。
「外出はお控えに…」
到着から3日間、外が怖くてそのホテルから一歩も出られずにいました。
人と会うのはベッドメイキングのおばちゃんと売店のおばちゃん。
どちらも英語を話す外人。
もう日本へ帰ろうかと思っていた時、そのベッドメイキングのおばちゃんが笑いながらいろいろ話しかけてくれました。
英語がまったくわからなかった私は「???」「???」ばかり。
わかったのは「go to my home」でした。
今なら、絶対に断る!知らない人にはついていかない!何を言ってるんだ!と思うはずなのに、
その時の私はその気さくなおばちゃんを直感的に疑うことなく
「ぎぶ みー でぃなー?」とか言いながらついて行ってしまいました。
それからの毎日の楽しいこと楽しいこと。
そのおばちゃんは旦那さんと娘さんの3人で暮らしていました。
英語のできない私に家族3人で英語を教えてくれ、息子のように褒め、怒り、地下鉄とバスの乗り方を教えてくれ、
休日には小さな車でロンドンの郊外に連れて行ってくれました。
出足はくじかれましたが、休暇を使い切ってしまう3週間があっという間でした。
日本に帰ると話した夜はみんなで泣きながら外食に行ったことが忘れられません。
それからは休暇とお金をためて何回もロンドンへ行きました。
もちろんその家族も何回か日本へ来て、今度は私が案内役になり一緒にあちこち旅行しました。
会うたびに「my son is aged!」なんて言われながら。
最近はそれこそみんな歳をとってしまい直接会うことも少なくなり、
メールや電話でのやり取りが多くなってしまいましたが、今でも頻繁に連絡を取り合う、
私を息子・弟と呼んでくれるロンドンの家族です。
出会いからしばらくして「なぜこんな変な日本人を家に連れて行ったの?」と聞いたことがあります。
答えは「かわいそうな外人だったから」でした…。
みんなで大笑いしました。
偶然の出会いがご縁になり、ずっと続く関係になる。
素晴らしいことだと思いますが、知らない人について行ってはいけませんよね。
今なら絶対にしない、今考えると怖いことでした。
Buckingham Palace前のThe Mallにて
これが自分だとは思えないくらい若い!
Tottenham Court Roadあたりかな…
British Museumの帰りだと思われます