第13回「熊野で出会ったおばちゃん神さま」
川の水、青くてきれいやろ~。
この前の台風の時はこの川幅いーっぱいに流れたんよ~。
その色たるや、とんでもない茶色やったんよ~。
そこに、人が作った石があるでしょ。
もとはそこになかったんよ~。
どっかから流れて来たんでしょ。
大雨が降ると色んな物が上から流れて来るからね。
今回は溢れはしないけど、8年前の台風の時はひどかったよ~。
その倉庫みたいの見える?
その屋根まで浸かったんだよ~。
この辺は低いから通りの店もみーんな水浸し。
私の家はあの山の方だからなーんともなかったけど。
新しい本宮大社は行った?
あの階段の半分くらい浸かったんよ~。
ここは最初に建てた大社の後。旧社地っていうでしょ。
低くて水に浸かってばっかりやから、新しく高いところに移したの。
こっちの鳥居の方が、立派やけどね。
川の水、ようやくすっかり戻ったね。
きれいな時はいいけどね、自然というものは一度荒れ狂ったら
人間なんてちーぽけでなーんにもならないよね。
ほーんとに。
またね~
ご縁があってこの9月に和歌山県の熊野の地を訪れた。
写真は着いたばかりの旧社地 大斎原(おおゆのはら)。
脇を流れる熊野川を眺めていたら、話しかけてくれた白いワンちゃんとおばちゃん。
後ろ姿を見送りながら、神様だったかも…と、ふと思う。
熊野本宮大社は明治22年の大水害を機にこの旧社地から現在の地に移転。
その後も度々溢れる川の話をしながら、地元の人は「人災です」という。
この9月、台風15号の影響で未だライフラインが回復していない地域がある。
そして、北海道胆振東部地震から1年。
西日本豪雨から1年2か月。
東日本大震災から8年6か月。
阪神淡路大震災から24年…。
天災なのか人災なのか、災いなのか自然の成り行きなのか、
分かりきらない時代の中で生きている私たち。
人間。非力だけど無力ではない。
大いなる自然の中で多くは無知であることを自覚しながら、
未知の未来に向かって持てる力を、今何に注ぐのか。
それを問われている気がした。