
鍼灸治療の代表的な効果として痛みを和らげる鎮痛効果があります。
痛みには様々な痛みがありますが、鍼灸治療には、筋肉性の痛み・神経性の痛み・胃痛などの内臓の痛み・頭痛など様々な痛みに効果があります。個人差はありますが、ヒトによっては痛み止め(鎮痛薬)が効かない痛みでも、鍼灸治療で緩和されることがあります。
今から約50年前の1972年にアメリカのニクソン大統領が初めて訪中した前年の1971年に、当時の大統領補佐官であったヘンリー・キッシンジャーが訪中し、その時に随行したニューヨークタイムズのコラムニストであるジェームズ・レストンが、虫垂炎を発症し手術を受けました。
その際に、術後の痛みに対して鍼治療を受け、痛みが緩和されたことを同紙の1面に、鍼治療体験および鍼麻酔に関する記事を掲載したことで、中国における鍼治療、鍼麻酔が世界中に知られることになりました。
この事をきっかけに鍼治療の鎮痛効果に関する研究が世界中で盛んに行われるようになり、そのメカニズムが解明されてきました。その一つを紹介すると、鍼治療の鎮痛効果にはオピオイドが関係していることがわかっています。
オピオイドとは、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどの脳や神経にある受容体に結びついて強い痛みをとる薬の総称(麻薬性鎮痛薬)のことですが、実は体内でも産生される内因性オピオイドがあります。
下腿部にある『足三里』や手の『合谷』に鍼を刺入し、持続的(30分以上)に刺激をすると、その刺激が脳に伝わり、中脳や視床下部からオピオイドが分泌され、脊髄の後角という部分に作用します。痛みの刺激は感覚神経をつたって脊髄を上行し、大脳に伝えられて『痛み』として認識されますが、オピオイドが脊髄の後角に作用することで、痛みが大脳に伝えられるのをブロックすることで痛みが緩和されるのです。

日常の鍼灸臨床において、慢性的な痛みで悩んでおられる患者様に鍼灸治療を継続して行うと、徐々に痛みが軽減し、痛み止め(鎮痛薬)の服用回数が減少したことをしばしば経験します。
慢性的な痛みで痛み止め(鎮痛薬)を常用されている方は、1度、鍼灸治療を試されてみることをおすすめします。