第46回シティちゃんの夢
インドネシアは、2億の人口を抱える世界最大のイスラム国家です。
第2次大戦中、旧日本軍が3年半にわたり統治しましたが、とても親日的な国民で、
「日本語学習者」の人数が世界第2位です。
首都ジャカルタには東京に匹敵する 1000万人が住んでいます。
そんなインドネシアにある、ハラパンキタ病院心臓病センターとインドネシア大学医学部付属病院に、
看護師7年目だった私が半年間研修に行く機会がありました。
インドネシア語ができなくても、身振り手振りで表現し、
あとは手術や看護などの医療技術があれば充分理解し合えることを実感した研修でした。
そして、看護師になって初めて「医療ってすごいな」「医療技術は言葉の壁を超えられる」ことを実感しました。
この研修中に私はシティちゃんという、8歳の小学校3年生の女の子と出会いました。
シティちゃんの家族はゴミ山に住んでいて、ゴミを分別して売って生計を立てていました。
インドネシアではエコの概念がまだまだ普及していません。
大都市ジャカルタで消費された大量のゴミは、お隣のブカシにトラックで運ばれ、無造作に捨てられます。
シティちゃんの親は、そこで家を建てて暮らし始めました。
このような事情でシティちゃんには戸籍がありません。
そのため、正規の学校に通うことができず、日本のボランティアが運営する非正規学校に通っていました。
シティちゃんには生まれつき重い心臓病があり、手術をしなければ寿命は10歳と言われていました。
手術には高額なお金が必要なため、受けることができずにいましたが、
日本人の担任の先生が尽力し、私が研修で滞在している間に、手術をうけることになりました。
手術室で麻酔をかける直前に、「わたし大人になれるんだよね。看護師さんになりたい。」と
自分の夢を満面の笑みで教えてくれました。
そして、一番痛みがでてくる術後2日目に、シティちゃんは算数をしていました。
手術室で笑顔で会話をし、術後2日目に算数をしている子供に出会ったのは初めてでした。
夢に向かって今を頑張っている姿に私が元気をもらってばかりでした。
退院日、シティちゃんは言っていました。
「看護師さんになっていっぱい働いてお金を貯めて、夢の国、日本に行きたい。」と。
シティちゃんの夢は叶ったのかな。