

今年も12月となり,1年があっという間に過ぎたように感じる。それと同じように感じているのは,物や事柄の名前がすぐに出てこないことだ。記憶力には自信があって,学生の名前は3学年全員覚えていて,顔と名前も一致できている。それなのに「あれ」「それ」「えーっと」が口から出てしまう。認知機能に不安な年ごろになったのだと感じている。
「To err is human(人は誰でも間違える)」を20数年前に医療安全推進教育研修で聴いた。「看護師は間違っていけない」「気をつけなさい」「しっかりしなさい」という精神論で育った私は,この言葉に深く安堵したのを記憶している。間違ってはいけないと思うと緊張は高まり,視野も思考も狭まり,却ってうまくいかない。それだけではなく,慌てる,見間違い・聞き間違い,思い込み,うっかり,忘れる,注意力の一点集中・散漫なども失敗の要因であり,それらは,エラーに繋がるヒューマンファクターといわれる。完璧な人間など存在しない。そして,過度な自信もエラーを引き起こす。大事なことはその自分のヒューマンファクター(エラー要因)を知って,方策を講じること。
残念ながら,加齢に伴う機能低下もヒューマンファクターといわれている。私の「あれ」「それ」も何かしらの失敗に繋がっていくのではないかと不安がある。失敗した時は「人は誰でも間違える」と自分に言い聞かせ,失敗した時の自分を丁寧に省みて修正していきたい。そして,「人は誰でも間違える」ことを言い訳にしないように,時には足を止めて自分の頭の引き出しを整理して、エラーを最少にしたいと思う。