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第81回『鍼治療の効果 その① 「胃の不調」』

「胃がもたれる」、「胃(みぞおち)が痛い」、「少し食べただけで満腹になる」、「胸焼け」、「吐気」、「げっぷがよくでる」などの胃の不調を感じたことがある方も多いのではないでしょうか。このような胃の不調の原因となる疾患に機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)という疾患があります。

FDは、胃のもたれやみぞおちの痛み(心窩部痛)、早期満腹感、食後の膨満感などの上腹部症状があるにもかかわらず、胃の内視鏡検査などで胃に潰瘍やガンなどの病気(器質的疾患)が認められない状態のことで、胃の粘膜に異常がないのに、胃の働き(機能)が低下していることが特徴です。
胃の不調を訴えて病院を受診した患者さんの約半数はFDと診断され、近年、増加傾向にあります。原因としては,食生活の乱れや心理的な要因があります。過度なストレスの蓄積、緊張状態の持続など精神的に不安や抑うつ状態が続くと、胃の働き(機能)が低下すし、FD症状を引き起こします。
治療としては消化管運動機能改善薬と胃酸分泌抑制薬が処方されますが、服薬していてもなかなかすっきり改善しない、再発を繰り返す方も多いようです。

一方で、鍼治療がFDの改善に効果が期待できることが臨床研究で報告されています。膝の外側のやや下にある「足三里」というツボ(経穴)に鍼をすると、胃の運動を調節している副交感神経である迷走神経が刺激され、胃の蠕動運動が活発になることがわかっています。
▼足三里
足三里

また、手のひら側の手首のやや上にある「内関」を刺激すると吐気やFDの症状が改善することが臨床試験で証明されています。
▼内関
内関

本学の東洋医学臨床治療所では鍼灸治療を行っています。FDの胃の不調でお悩みの方は鍼灸治療を試されてみてはいかがでしょうか。お気軽にご相談下さい。

岩 昌宏