未来の医療に向けて、看護と伝統医療の連携を図る
現代の医療行為においては、それが確かなエヴィデンスに基づいていることが必須の要件であると、強調されています。医療者個人の嗜好や見解などに左右されることなく、社会の構成員全員が、客観的に標準化された医療を受けられるようにするためです。この場合、エヴィデンスをどのようにして求めるかですが、主流となっている方法論は、多数の対象者を2群に分け、片方にはなにがしかの介入を行い、もう片方には介入しない、あるいは別の介入を行う。そうして、2群の結果を比較して、介入の妥当性を検証し、論文が作られ、多数の論文が総括されて、エヴィデンスとしてまとめられていくのです。注意すべきは、対照を用いる方法論は主流ではあるものの、他の方法論が絶対的に否定されているものではないことです。すなわち、科学の真理は、常に実験研究のみから導出されてきたとはかぎりません。自然なり人間の営みをレトロスペクティブに仔細に観察することによっても、真実に到達できるのです(例として進化学や公衆衛生学などが挙げられます)。
看護学の英語名に、science が付帯されることからすれば、看護学には介入的要素と観察的要素が複合して内包されていると、考えられます。一方、我が国において伝統医療と称される範疇には、鍼灸を中心とした東洋医学や、我が国発症の柔道整復学などがありますが、これらは専ら経験に依拠した医学と思われています。しかし、これらの伝統医療もまた、介入の結果を観察することの、長い年月にわたる蓄積を核に有する学問であります。
令和時代の我が国は、スーパー・エイジング社会となり、在宅医療・在宅看護により多くの資源が投入されようとしています。上に述べたように、看護と伝統医療には、本質的に相通じあう要素が潜在しています。どのような連携が可能であるのか、連携によりこれまでにないどのような新しい益を、在宅医療にもたらしうるのか。ここに、伝統医療看護連携学会を立ち上げ、学会活動を通じて究明し、些少なりとも社会に還元できればと願っております。
日本伝統医療看護連携学会設立パンフレットより
(令和元年7月)