COLUMN

【第158回】私の好きな場所

私は子供のころから本を読むことが好きだった。そして本がたくさん並んでいるところも大好きである。誰かと待ち合わせをする場所が書店であれば、少しくらい待たされても平気である。書店に並ぶたくさんの本を手にとっては、買おうか買うまいかと悩むことで時間が過ぎていく。

図書館も私のお気に入りの場所である。小学生の頃は学校の図書館に毎週通い、たくさんの本を借りて帰った。お気に入りはホームズやアガサ・クリスティの推理小説で、小説の途中でドキドキしたままでは眠れないので、結局夜中までかけて結末を知り、すっきりしてから眠るのが常だった。また学校の他に住んでいる町の図書館にも通い、学校にはない本を探していた。

大人になり、子供の大学受験に向けて秋田県にある国際教養大学のオープンキャンパスに付き添いで参加した。そしてその大学の図書館にすっかり魅了されてしまった。大きなすり鉢を半円で切ったような図書館は、本のコロセウムをテーマにつくられているそうで、まるで古代遺跡の円形劇場のようである。全面秋田杉でつくられており、24時間365日の使用が可能である。私は映画スターウォーズのアミダラ女王が出席していた宇宙会議を思い出した。すり鉢の一番底から上を見渡し、次に一番上の段から全体を見下ろした。そして広い空間の中でも、座ると不思議と落ち着くマイスペースでずっと本を読んでいたいと思った。結局子供は違う大学に入ったので、この図書館にはあれ以来会えていない。

ところがつい最近、TVで石川県立図書館のことを知った。2024年に完成したばかりの図書館であるが、こちらも大きなすり鉢状で、しかも半円ではなく360度のすり鉢になっている。なんと素敵な空間だろうと思ったが、入場者数もとても多いとMCが説明していた。私の次の目標はこの図書館を訪れることに決まった。

特任教授 森岡 薫