COLUMN

【第157回】「水五訓」~「水」を通した教え~

黒田官兵衛の「水五訓」という教えをご存じでしょうか。「水」を通した人としての生き方の教えです。テレビドラマや、歴史などの授業で聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。これは戦国時代を生き抜くための教えでもあると言われており、現代の価値観や社会情勢に合わせようとすると難しいこともあると思います。原文をどのように解釈し自身の指標とするかは人それぞれだと思います。初めてこれを聞いたときに何故に「水」?と思いましたが、何かの折に読み返して自分の人生に照らし合わせています。

それでは「水五訓」をご紹介したいと思います。矢印(⇒)はその意味を示しています。

一、自ら活動して他を動かしむるは水なり

⇒水は自ら動きます。水のように自ら動き模範を示すことで周囲を牽引しよう。

二、障害にあい激しくその勢力を百倍し得るは水なり

⇒水はいかなる環境下でもその流れを止めず絶えず動いていきます。物事を進める上で障害や壁があります。それは自分の失敗や周囲からの物など様々です。努力し(努力しなくてもコツコツ)続けていくことが自分の力をつけていこう。

三、常に己の進路を求めて止まざるは水なり

⇒水は常にその先を求めて流れ続けます。その流れのように自分を信じ自分が決めた道は、迷い止まることなく進んで行こう。

四、自ら潔うして他の汚れを洗い清濁併せ容るるは水なり

⇒川や海水は汚れた水が流れてきても「来るな!」と言わず混合していきます。学校、部活動、サークル、会社などは様々な価値観を持った方がいます。中には自分との価値観が異なる方もいますが、苦手だな嫌だなと思う人でも嫌悪せず、良いところを見つけ共存していこう。

五、洋々として大洋を充たし発しては蒸気となり雲となり雨となり
雪と変じ霰(あられ)と化し凝(ぎょう)しては玲瓏(れいろう)
たる鏡となりたえるも其(その)性を失はざるは水なり

⇒水は温度変化によって、氷や湯、蒸気となったり、雲や雨、雪やあられにと自身の形を変化ます。さらには器を変えればその器の形に変化します。だけど水の本質は失われず変化しません。
水のように与えられた環境の中でも自信を見失いことなく柔軟に変化し成長していこう。

以上です。
一~五の中で「なるほど」と思った教えはあったでしょうか。人生、楽あり苦あり、進むか止まるか引き返すか?そのような時に「水五訓」を思い出してみてはいかがでしょうか。

参考文献:本山一城.秀吉に天下を獲らせた男 黒田官兵衛.宮帯出版社.2014

准教授 岩渕 起江