COLUMN

【第118回】助産師って職人なのかな?

連日報道されている新生児の産み落としや遺棄事件のニュースをみて、心を痛めている青野です。
今回は助産師の仕事について、私の体験談も含めて少しご紹介したいと思います。

私は助産師として22年ほど臨床で勤務し、700人以上の赤ちゃんを取り上げてきました。
助産師になって5年目のある時、当時一緒に働いていた産婦人科医が私の5年間の分娩介助件数(赤ちゃんを取り上げた数)を調べてくださいました。
細かい数字は忘れましたが500件以上だったと思います。

それにしても5年間で500件ってやっぱり多いんでしょうかね・・・。

今は少子化ですし、帝王切開術の割合が増え自然分娩そのものの数が減っていますから。
実習で学生を連れて病棟にうかがうと、新人の助産師さんたちの分娩介助件数が増えない・・・と嘆いていらっしゃるスタッフの姿もよく見かけます。

私、その当時は必死でしたから、数なんか考えずにひたすら赤ちゃんを取り上げる日々を過ごしておりました。今考えると幸せな日々だったのかもしれませんね。

ただ、そういう日々を繰り返しているうちに私「職人」になったんじゃないかな?という感覚が芽生え始めました。

というのは、助産師に必要なスキルとして分娩介助技術(会陰保護 えいんほご)というものがありまして、いかに安全に、産道の損傷を作らず安楽に分娩をさせるかという目的の技術なのですけど。まぁ、会陰保護技術と言いましても、赤ちゃんの頭が出てくるスピードを調節する呼吸法・いきみ方の指導と「両手の感覚」としか説明できないのですが・・・。

そして、5年目くらいになったあたりで、うまく分娩させられるかどうかが何となくわかるようになりました。経験というものはすごいですね。やっぱりいろんな職人さんと通じるものがあるのかもです。(笑)

先ほどの産婦人科医に「(青野の旧姓)〇〇さんといえばノーリスだよねー」と言われて嬉しかったのを覚えています。ノーリスとは産道の損傷がないことを表す言葉で、産科でよく使用しているものです。(全国共通なのかはわかりませんが、少なくとも私の実家のある青森とここ宮城では通用しました。)

いわゆる「ノーリスのお産」は産道の損傷がないので産後のお母さんの体の回復がスムーズに進み、母乳育児をする上でも授乳姿勢の苦痛が少ないと言われています。そういう意味では少しだけですけど貢献できたのかな・・・と思っております。

助産師の役割はもちろんこれだけではないのですが。
ちょっと長くなってきたのでこの辺でいったん失礼いたします・・・。次回へ続く。

※ちなみに1年間の出生数は・・・
第二次ベビーブーム 1973年 209万人でピーク

私が入職5年目の時 1999年 約118万人
現在、2022年 約77万人 でした。

50年で約130万人も減っているんですね。

※ノーリスとは
no laceration(裂傷)が略されて、なぜかそう読まれている?ようです。

 

青野 都

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