仙台赤門短期大学 看護学科

宮城県仙台市の看護師養成学校|仙台赤門短期大学 看護学科

MENU

教職員コラムリレー
Akamon Column Relay

第141回神様のご褒美

金野 明子

 今回は「教育」というテーマをいただいているので、あらためて教育とは何だろうと考えてみた。
 学生時代、教育学の講義で聞いた「人は教育によって人間になる」という言葉は何故か印象に残っていた。その後しばらく忘れていたが、教員に転職して講習会に行った際、講義で再び同じ言葉を聞いて、そういえば・・と記憶がよみがえった。この言葉はドイツの哲学者カントが唱えていたもので、「人間らしく生きるために教育は必要なのだ」という意味があるという。
 病院勤務を経て教員になってみて、「はて?教育と指導は何が違うのだろう」と疑問が芽生えた。病院時代は新人や学生の教育に携わってきたつもりであった。しかし教育の場に身を置いてみると、病院時代のそれは教育だったのか?指導だったのか?と疑問を持ってしまった。講習会の教員仲間たちも同じように疑問を持っていたようで、しばし意見交換したが、そこで得た結論は「指導とはスキルや知識を身につけさせることが主眼となり、直接的なアドバイスやトレーニングを行うことであり、教育とはより広い知識や価値観を育むことを目的として、長期的な視点から人間の成長を促すこと」ということであった。

 教員になりたての頃に上司に言われた「教育の成果は10年後によくわかる」とは、このような事なのだ、とその時に理解できた。その上司は「自分なりの教育観を持ちなさい」とよく話されていた。10数年たった今でも教育観をすらすら語ることはできないが、「学生は様々な可能性を秘めている。皆が芽をうまく出せるわけではないので、その時にはゆっくりと芽が出るのを待つ」ことを心がけて歩んできたつもりである。
 最近嬉しいことがあった。初めて担任をした時の学生たちが、実習先の病院で指導者になっていたのである。10数年前、卒業式で大泣きしながら不安げに社会に旅立っていった彼らが、今では立派に病棟の中堅看護師になっていた。丁寧に学生に実習指導をしているその姿を見るたびに、教育の成果はこうやって後から見ることができるのだとあらためて思った。
 看護教育に携わる人たちは、少なからずこのような嬉しい経験をすることがある。一般教育の教員に比べると講義や実習指導の負担もあり迷い悩むことも多いが、それでも神様はちゃんとご褒美を用意してくれているとつくづく思うこの頃である。