仙台赤門短期大学 看護学科

宮城県仙台市の看護師養成学校|仙台赤門短期大学 看護学科

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教職員コラムリレー
Akamon Column Relay

第7回今、自分ができること

小野 八千代

 

 

先日、知人が「今の子供は父親と夕飯を食べることを知らない。父親を夕食の時刻までに帰してほしい。昭和初期のように家族みんなで夕飯を食べたい。」と言った。帰してほしいというのは、仕事場から自宅に帰してほしいということである。私達は生きるために食事をする。食事はエネルギー源となる。しかし、食事をすることの意味はそれだけではない。食事をすることで満腹感が得られ、幸福感や生きる喜びにつながる。さらに、食事は家庭においては、コミュニケーションをはかるツールとなり、子供にとっては社会のルールや躾を学ぶ場ともなる。家族そろって夕飯を食べることが少なくなってきた現代、何か大きなものを失った感じがした。知人の話を聞いて、世の中が大きく様変わりしたのを改めて実感した。

 

加えて、現代の世の中も日々大きく様変わりしている。最近読んだ新聞の記事と所感を挙げてみる。合計特殊出生率が1.42で、統計が始まって以来の過去最低の出生数である。合計特殊出生率が過去最低で子供の数が減少している、その一方で子供への虐待数は増え、死に至った子供のケースもある。無念としか言いようがない。中高年においては、中高年の引きこもりは61万人ともいわれ、8050問題になっている。彼ら・彼女らも本当は働きたいのではないだろうか。高齢者においては、高齢者ドライバーの多発事故の発生。その結果、幼い子供の命が奪われてしまった。誠に切ない。昨今は、老後2000万円問題が浮上している。一生懸命働いてきたのだから、せめて老後は幸せに生きたいと誰しもが願っているに違いない。

 

このように考えると、年少人口、生産人口、老年人口、どの人口層をみても何かしらの大きな問題を抱えている。この状況のなかで、3年後に老年人口へ仲間入りをする私にできることは何だろうか。出産後の娘を支援し、孫がしっかり育つように見守ることだろうか。疾病の予防に努め健康寿命を延ばすことだろうか。看護職として生涯働き続け、日本の経済に寄与することだろうか。ハヴィガーストの中年期の発達課題にあるように、10歳代の子供たちが、信頼できる幸福な大人になれるように援助することだろうか。やらなければならないことは数多くある。大事なのは、自分ができる範囲で問題解決に向けて取り組むことであろう。

 

昔に遡っていろいろと考えていたら、子供の頃、2階の私の部屋から1階の屋根に布団を干し、その干した布団の上に寝転がり、流れゆく雲を眺めながらそのまま眠ってしまったことを思い出し、心穏やかな気持ちになった。安心して暮らせる時代になってほしいものである。