仙台赤門短期大学 看護学科

宮城県仙台市の看護師養成学校|仙台赤門短期大学 看護学科

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教職員コラムリレー
Akamon Column Relay

第116回「がんとともに生きる患者さんへのセルフマネジメント支援」の授業を振り返って

浅野 志保

私のコラムでは、2年生前期開講の必修科目「成人看護学援助論Ⅰ(慢性期)」における1コマ、「がんとともに生きる患者さんへのセルフマネジメント支援」の授業の様子をお伝えします。本授業では、慢性疾患を有する患者さんを支える看護師の役割について思考する力を養うことを目指しています。

授業冒頭で、学生は、がんとともに生きる患者さんがどのような苦痛を有しているのかについて、4つの側面から学習しました。4つの側面には、がんそのものやがんの治療によって生じる副作用などの「身体的苦痛」、気持ちの落ち込みや不安といった「精神的苦痛」、経済的な問題が生じてしまうといった「社会的苦痛」、どうして自分が病気になってしまったのだろうと自分の存在意義を考えてしまう「スピリチュアルペイン」があります。これらは互いに影響し合うとされています。

次に、4つの視点をもとに、がんとともに生きる人の苦痛について、より具体的に掘り下げ、学生が自ら考え、意見交換するワークを行いました。そこでは「がん疼痛に対して医療用麻薬(オピオイド)が開始となった患者さん」の事例を通して、「患者さんらしい生活を阻んでいる要因は何か」「患者さんができることは(できる可能性があることは)何か」について考えました。
この授業では学生が、患者さんの強みやもてる力を活かすために、多角的に患者さんを捉えることを大切にしました。当初、患者さんの「困りごと」や「できない」ことにとらわれがちだった学生も、学生間で意見交換を重ねるうちに「できる可能性がある」ことへと視点の広がりを持つことができるようになりました。

授業後半では、患者さんの強みやもてる力を活かすには、看護師としてどのように関わっていくことが望ましいかについて意見交換をしました。学生は自分のものの捉え方を発表するだけではなく、他学生の意見を聞くという体験を通して、新たな気づきを得て、自分が持ち合わせていなかった視点に刺激を受けたようでした。

 

学生は、座学や意見交換を通して下記のような学びがありました。

「その時の患者さんにとって何ができるか、患者さんが何をしたいと思っているかを1番に考えて看護していくことが大切だと思った」

「その人ができることを私たちが決めつけてはいけないこと、本人が自ら選択し、どこまでなら可能なのか、できるのかを相談して、自己実現に向けて支援していくことが重要であるということを学んだ」

「人それぞれに合ったケアの仕方・方法は違うことを改めて今回の授業で感じた。知識や技術はもちろん大切だが、それと同時に、私たちがどれだけ相手のことを考えてケアできるかということも大切ではないかと思った」

ただ知識を与えられるのではない、自ら授業テーマについて考え、意見交換をし、理解を深めていく。これが短大での授業の意義です。看護師は、患者さんとそのご家族が歩まれてきた人生、生活スタイル、そして価値観や信念を丁寧に捉え、多様な価値観に触れ、寛容する感性を養うことが重要であると学生と共有できた貴重な時間となりました。