第80回青葉山に来て想う
昔、秋田に住んでいたころから父が「珪化木(けいかぼく)」を収集していた。
「木石(きいし)」と呼んでいて、石なのに年輪が見えたり、メノウ化していたり、
とても綺麗で不思議な石たちだった。
昨年、父が亡くなってからも実家の庭を彩っている。
珪化木
また、山形県との県境近くにある海士剝(あまはぎ)海岸では、
鳥海五色と言われる赤や青や緑、黄色、黒などが複雑に模様を描く美しい石を拾うことができる。
遊泳禁止で波の荒いその海岸で、家族で競って美しい石を拾うのは、
大人になってからも毎年お盆の墓参りの行き帰りの恒例行事となっていた。
海岸の石
仙台に引っ越して来てからは、竜の口渓谷で化石が出る、名取で中生代のサメの歯化石が出る、
茂庭でも化石が取れると知れば西に東に掘りに行くのが家族行事であった。
そうやって、私と弟2人は石、化石、地質、地球に深く興味を持つ人間になっていった。
赤門短期大学のすぐ脇に伸びている「三居沢」には、昔水力発電施設があったらしい。
この三居沢が広瀬川に合流する近くの露頭では、橄欖石(かんらんせき)の大きな結晶を採集できた。
今は住宅地になってしまった。
橄欖石の結晶
現在、西道路のトンネルが通っている地層は「広瀬川凝灰岩」という厚さ10mに近い火山灰層である。
高校の頃、応援団の声出し練習で、まだトンネルで削られていない10mの壁に向かって
「こだまが返るような声を出すよう」と、先輩に指導されていた。
これほどの厚さに堆積した火山灰は、どこからやってきたのだろう。
この、火山灰層では火砕流で焼けた立木の化石やそれから立ち上る「煙の化石」、
降灰時に降った雨が火山灰を粒上に固めた「雨の化石」を観察することができる。
また、青葉山に切れ込む竜の口渓谷からはクジラの化石が発見されている。
鮮新世前期(500万年前)、仙台平野はクジラが泳ぐ海だった。
2万年前の最終氷河期が終わる頃、海岸線は今よりずっと沖にあったが低湿地だった。
そして6千年前の縄文海進の後に、やっと今の仙台平野が形作られた。
その6千年前にまだ海だったところが、今回の東日本大震災の津波で洗われたらしい。
今の仙台の地は、人が住み始めてやっと5千年になるかならないか、である。
地球の長い長い歴史の中で、火山灰に覆われ、津波で洗われ、地震で山体崩壊し、
海になり、陸になり、削られ、積り、今の私たちの生活がある。
つかの間の平安を享受し、悔いの残らない人生を全うしたいと思う今日この頃である。
青葉山校舎からの夕景