第71回夢のログハウスを、思う
私がログハウスに夢中になったきっかけは、倉本聰原作・脚本のドラマ「北の国から」である。
ストーリーをひと言でいうと、東京から北海道の富良野に移り住んだ父と二人の子どもを中心に、
様々な人間模様が繰り広げられる、ヒューマンドラマである。
その父、黒板五郎(田中邦衛)が、仲間と作った、丸太を積み重ねた、小屋と言ってもよいほど小さなログハウスに、
一目惚れしたのである。
それ以来、私は当時刊行されていた「夢の丸太小屋に暮らす」(通称“夢丸”)を購入しては、
隅から隅まで何度も読み、ログハウスについての色々なことを知っていった。
雑誌のタイトル通り「いつか、丸太小屋に住めますように」と願いながら。
ログハウスといっても、その工法により呼び方が変わる。
ハンドカット、マシンカット、P&Bなどである。
工法が違うので、当然外観に違いが出る。
それぞれに特徴があって、どれも捨てがたいものがあるが、私は特にハンドカットのログハウスが好きである。
「北の国から」で見たログハウスがそれである。
ハンドカットのログハウス(以下、ログハウス)は住宅として、さまざまな良いところがある。
例えば断熱性。
ハンドカットログは積み上げた丸太がそのまま壁の役目を果たし、その厚さは200㎜前後が普通である。
そのため外気温に左右されにくい。
耐震性や耐久性、耐火性にも優れているというから、本当に夢のような建物である。
しかし、良い所ばかりではない。
丸太なので、2~3年経過すると、丸太が縮み、家全体が沈んでくる。
セトリングと呼ばれるこの現象に対処しなければならない(普通はメーカーが対処してくれる)。
また、風雨にさらされ汚れたままにしておくと、そこがカビたり腐食してしまう(相当放っておいた場合だが)。
内側と外側と言っているだけで、1本の丸太なので、腐ってしまっては壁の一部を損失する羽目になる。
そこで数年に一度、外壁の塗装のし直しが必要になる。
普段のお手入れをマメに行うに越したことはない。
本来 “家を建てる”とは、完成した家を手に入れることだと思っていた。
しかし、ログハウスは、いわば未完成な状態で引き渡される。
相手は自然なので、仕事がいそがしいとかで、ちょっと手を抜くと、その結果に愕然とする。
反対に、きちんと手をかければ、本来のもてる機能を発揮してくれる。
「夢丸」に掲載されていたログハウスのオーナーたちは、
示し合わせたように「生活を楽しんでいる」「くつろげる」「ログハウスを建てて良かった」と言っていた。
そして実際、手入れをするのが楽しそうであった。
ログハウスに住むのは決して容易なことではない、大変なのだ。
しかし、ログハウスに暮らし、その大変さを楽しんでみたい、と私も思う。
完成品を楽しむのではなく、手をかけ、どう変化していくのか、どうなっていくのかと期待しながら。
そんな暮らしをしてみたいと思っている。