仙台赤門短期大学 看護学科

宮城県仙台市の看護師養成学校|仙台赤門短期大学 看護学科

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教職員コラムリレー
Akamon Column Relay

第58回お豆な話

鈴木 慈子

みなさんにとって、お豆といえば何豆ですか?

ここは宮城県。

北海道に続く大豆大国。

やはり「ずんだ」、青大豆なのでしょうか。

最近は転作のせいか、パッチワークのように稲と大豆が隣り合わせになる田んぼの景色がちらほら見られますね。

 

私は北海道の生まれ育ちなのですが、新しい土地に暮らすたびに地面に植わさっている農作物や食べ方の違いから、

気候の違い、文化の違いに驚きます。

実家でよく食卓にあがっていたのは、甘く煮つけたホクホクの「とら豆」でした。

私たち一家はそれを「煮豆」と呼び、「煮豆」イコール甘い豆なのでした。

煮豆はもちろんご飯のおかずです。

宮城に来てこの話をしたら、「甘く煮た豆は、お茶うけよ」とびっくりされました。

自分のウチで当たり前と思っていたことが、世の中のスタンダードではないことを知るのです。

 

宮城に来てしばらくたったある日、急にとら豆が恋しくなりました。

スーパーや八百屋を巡って探してみたのですが、見かけるのは大豆や青大豆ばかり。

お店の人に、とら豆を扱っていないか聞いてみると

「ほら、あれは煮ると模様がなくなるから、皆あまり好まないんじゃないかね」

いえいえ、トラ模様は煮ても落ちませんから(笑)。

 

さてさて、勇気を出して、青大豆にトライすることにしました。

お豆といえば煮豆、煮豆といえば甘い豆しか浮かばない私。

しかし、これは大豆の仲間なので、甘く煮るのは違う気がする…。

どうやって食べたものか…。

ちょうど豆談議で盛り上がった、パン屋のお母さんに聞いてみました。

「浸し豆にするといいわよ。お正月はそれに数の子乗せたりするの」

きっとおウチごとに、浸しつゆのレシピがあるのでしょうね。

ずぼらな私はめんつゆを使うことにして、お気に入りのメニューになりました。

うっかりすると、ある日の晩酌のお供は、焼き枝豆・冷奴・浸し豆。

豆ばっかりです。

 

ここ数年は、コロナ禍でお正月もお盆も帰省はお預けです。

黒豆も自分で煮るようになりました。

パン屋のお母さんに教えていただいた圧力鍋は、扱いやすくとても優れものです。

ずぼらな私でも、簡単に美味しくお豆が煮られるようになりました。

今年のお正月の黒豆は、仙南の力強そうなお豆だったのですが、とてもいい感じに煮あがりました。

 

黒豆で思い出すのは、病院勤務時代のお正月です。

がんの専門病院に勤めていた時は、年末年始は手術や治療はお休みで、

終末期の方もできるだけ最後のお正月をお家で過ごすため、病棟に残る患者さんはわずかでした。

元旦の朝食はお雑煮が出るのですが、お餅が食べられない患者さんにとってお正月感はほとんどありません。

そのお正月、最期の時が近づき、受け答えもはっきりできなくなったある方がいました。

ご家族は事情があって面会に来られません。

夜勤だった私は、こっそり実家からとどいた黒豆や数の子を持ってきて(ホントはダメです)

「○○さんちのおせちはどんなのですか、ひとくち一緒に召し上がりませんか」と尋ねてみました。

ちょっとびっくりしたような○○さん、しばらくそれを眺めて、静かに笑みを浮かべました。

結局それから最期まで、お口にしたのはお水だけでしたが。

 

ちょっと疲れたとき、大雨や台風でドキドキするとき、お豆を煮たくなります。

お豆を食べると、身体に大地の力を分けていただける気がします。

皆さんのおウチの美味しい食べ方、ぜひおしえてください。

さぁ、今日もお豆を食べて、元気に生きよう。