第40回東洋医学特別コラム第2回「知っておくと良いツボ『足三里』」(全3回)
本学非常勤講師 宍戸 新一郎
奥の細道に「三里に灸すゆるより、松島の月まづ心にかかりて」という一節がある。
旅立ちに当たって、松島の月を気にかけながら、膝にある足三里のツボに灸をすえたという内容である。
他に「三里に灸の痕なき者と旅をすることなかれ」とも言われ、足三里にお灸をして旅をすることは一般的なことだったのだろう。
足三里の効果として健脚、そして胃腸の調子を整える働きがある。
足三里の鍼刺激により腹腔内の血流量増加が報告されており、その他の効果の検証が進んでいるが、
先人たちは旅の養生として足三里の効果を経験的に知っていたのだろう。
また近年「モクサアフリカ」という活動がウガンダ共和国で試みられている。
結核予防のため、投薬治療の補助療法として足三里に灸をすえるという取り組みである。
お灸の効果として免疫力(CD4)の向上が報告されており、
更に薬剤を減らすことで関節痛や食欲不振の副作用を抑えることができたということである。
足三里はスネにあり、膝のお皿の上に親指を当て、お皿をつつみこむように握った際に中指の先が当たるところにある(下図参照)、
押してみると気持ち良く感じる。
ハリや灸でなくても、指で押すだけでも効果はある。
私の祖母は足三里に生米をテープで貼り付けていた。
96歳で亡くなったが足三里刺激のおかげで長命だったのかもしれない。