第36回母の入院を通して
今年1月に母を亡くした。
年齢は94歳。
死因は膵臓癌であった。
告知の際も家族のみに知らせるという先生の配慮があったが、
どんな診断であっても自分も直接聞きたいという母の希望で病室での告知となった。
本人曰く「いろんなことがあったけど年に不足はないし、これまでずっと健康で楽しく生きてこられたから、
何も思い残すことはない」といたって冷静で、まわりの方が狼狽するというありさまであった。
告知ののちも入院せずできるだけ自宅で過ごしたいという本人の希望で、自宅での療養となった。
しかし次第に体力は失われベッドの上に起き上がるのも困難となり、また時折激しい痛みも走るようになってきた。
本人も在宅療養も限界と感じたらしく、病院で約1か月の入院生活を送ることとなった。
入院生活中、看護師の方には患者が高齢ということもあり、特に容体の変化に気を配って頂いた。
足のむくみや末端の冷えに気付いて不安にさせまいとする心のこもった話しかけとともに
あんかの手配や長時間にわたるマッサージなどを行っていただいた。
本人の意識は最後まで鮮明で終末期であることを意識しており、
それを見守るしかない家族にとっても患者に寄り添った親身な対応は何物にも代えがたく感謝の一言に尽きる。
そしてその姿にもはや死語となった白衣の天使という言葉を思い起こした。
看護師は人の命を預かる仕事であると言われる。
命にかかわるだけにミスは許されず「ごめんなさい」ではすまされない大変な仕事である。
より敏感に気付き、より思いやり患者の不安を和らげる。
看護師はあらゆる職業のなかで最もきめ細かい配慮が求められる職業で、皆それを実行しているということが今回の経験を通じて
実感できた。
母の死後2月より事務職として入職させていただいているが、
それがあのひとかたならぬお世話を頂いた看護師の養成のための短期大学であるということに
何かの縁のようなものを感じている。