第33回児童書が教えてくれた、大切なこと
私は洋書を読むことが趣味ですが、「多読」に出会ったことがきっかけです。
それは絵本から始めて、辞書は引かずに英語を自然に受け入れていくような読書法です。
今でこそ『トワイライト』など、英米の若者、大人向けのものを読むようになりましたが、
初めはそれこそ『はらぺこあおむし』を読んで、子ども時代に帰ったかのような気分で楽しんでいました。
その過程で私は、心を震わせる児童書に出会いました。
それはE. B. ホワイト作の’Charlotte’s web’ (web は蜘蛛の巣、の意味です。
確かにインターネットのつながりって、蜘蛛の巣を張り巡らせたように感じますね) でした。
日本語版タイトルは『シャーロットのおくりもの』で、
もしかしたら映画で観たことがある方がいらっしゃるかも知れません。
農場でとても小さく生まれてしまった子豚のウィルバーが、見捨てられて危うく死んでしまうところだったのを、
農場の娘ファーンが必死で守り、立派に育てます。
でも今度はハムにされそうに…それを納屋で生活する蜘蛛のシャーロットが自分の糸で ”Some PIG” (特別な豚)など、
いかにもウィルバーが特別であることを示すような言葉を紡ぎだすことで防ぎます。
やがて冬が来て、シャーロットはある重要な事実をウィルバーに告げるのですが…。
後は壮大なネタバレになってしまうので伏せますが、死ぬことは決して永遠に無となることではないのだ、
命のリレーでもあるのだということを、子どもの目線でしっかり教えてくれたのです。
患者さんやそのご家族と関わったり、自身の家族の死を経験したりする経験を通して、
私たちはつい死というものを辛いもの、悲しいものとして捉えがちですが、
生きるものは平等に死を迎えるし、それは自然なことだという大切なことを思い出すことができました。
大切なことは専門書だけで学ぶわけではなく、意外に子ども向けの本や、
簡単な本が気づかせてくれるものだと私はこの経験を通して考えるようになりました。
私はたまたま洋書で出会いましたが、和書にもそういった本は山のようにあります。
皆さんもぜひ絵本や児童書に触れてみてください。
何か新しい、でもとても大切な気づきがあるかもしれません。
原作の表紙。「なぜ蜘蛛の巣?」と最初は思いました。
映画のジャケット。シャーロットの声はなんとジュリア・ロバーツです。