仙台赤門短期大学 看護学科

宮城県仙台市の看護師養成学校|仙台赤門短期大学 看護学科

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教職員コラムリレー

第15回「思いやりが欠如すると?」

岡田 康平

私は本当に映画が好きで、よく映画を見に行きます。

洋画、邦画、アニメ・・・ジャンルは問いません。

最近は「JOKER」を見てきました。

10/4公開以来、興行収入記録をつぎつぎと塗り替えている作品ですので、内容については説明する必要もないかと思います。

ネタバレになるので内容は書きませんが、一人の心優しい青年がいかにして悪となったのかという過程を描いています。

私も映画館で観終わった後、しばらく席を立てないぐらいの衝撃を覚えました。

映画自体はとても陰惨な内容なのでコラムリレーの題目としてはふさわしくないのかなと思いますが、少しお付き合いください。

 

さて、私は現在成人看護学の講師として勤務しておりますが、生涯の研究テーマとして

「高次脳機能障害」をとりあげ日々研究に取り組んでいます。

「高次脳機能障害」とは「高次の脳機能の障害」を指しています。

駅で切符を買う、自分で食べたいものを選んで食事をする、待ち合わせの時間を決める…

ほか生活全般の行為には高次の脳機能が関係しています。

あくまで持論ですが「高次の脳機能」はすなわち普通に生活をしていくための機能とも言いかえることができます。

しかし、交通事故などの外傷や脳血管疾患を患ったことにより、その脳機能が失われると・・・

駅で切符を買うことができない、食事をしたことを忘れてまた食べてしまう、

待ち合わせ場所が覚えられず、道に迷ってしまうなど、

普通に生活していくこと自体がままならなくなってしまいます。

 

現実社会で生活していくうえでさまざまな困難を伴ううえ、さらにやっかいなことにこの障害は「目に見えない」という特徴を持っています。

例えば交通事故などによる脳外傷であったならば、治療が適切に行われれば見た目的には以前の姿とは変わりがありません。

見た目が変わらないので、周囲の人も障害に気づかず、周囲から健常者と同じ扱いを受けることになります。

退院後の普段の生活のなかで、問題行動としてあらわれて初めて、一緒に生活する家族が

「あれ、前と違うな」という感じで気づくということがほとんどです。

生活の中で徐々に明らかになってくる当事者(障害者)の異常な行動(あくまで健常者からみた)に対し、

家族は戸惑い、悩み、相当の負担感を感じながら、最終的には何とか共生していく道を模索しています。

 

残念なことに同障害を有する方は全国で推定50万人といわれており、

家族の介護負担の問題や就業の問題(早期退職、復職困難)など様々な困難があるうえ、

それらをきっかけに引きこもってしまう障害者の方々も決して少なくないという状況があります。

周囲が正しく理解し、思いやりを示すことで当事者やその家族は十分に救われます。

しかし、まず「高次脳機能障害」という言葉自体を知らない人がまだたくさんいるのではないでしょうか。

障害のことが理解できれば、自然と手を差し伸べれるはず・・・そうした思いをコラムにしたためました。

これをご覧になった方は「高次脳機能障害」という言葉をぜひ覚えていただきたいと切に願います。

 

冒頭の映画「JOKER」の主人公は、社会保障もふくめて周囲の環境に恵まれない結果、

本物の「悪」に至るのですが、その過程で、生活場面のいたるところで「思いやりの欠如」が見られていました。

 

もちろん「高次脳機能障害」の当事者と映画の主人公や設定等は同じではありません。

しかし、周囲の思いやり次第で良くも悪くもその後の人生に影響が生じるという点においては共通点があると映画を見て感じました。

 

主人公が

「社会は障害を持っている人に対して普通(健常者と同じ)になれといっているようで怖い」

と言っていたのが印象に残っています。

 

私は、研究を通じて障害を有する方や家族と接してきましたが、皆様が語っていた内容と、

主人公のセリフに似ているところがあると感じ、はっとさせられました。

「思いやりとは何だろう」

障害を有する方への見方を変えるべきは我々の方ではないかとあらためて感じるところです。

 

ちなみにこの映画を見に行く際は、心身ともに好調な時をおすすめします、ということで「あとがき」とさせていただきます。

最後までおつきあいくださりありがとうございました。